こんな所にこんな食べ物やが・・・・・(from h2)

 私は一時、マーケティング業務などをやっていました。  この仕事は、彼方此方で、お客さんと一緒に食事等が当然ついてまわります。 お客なので、(招待しても恥ずかしくないよう) 垢抜けた・無難で美味しい店の行くのですが、そんな所は無難に美味しいのが通例でした。  でも (特に関西では) 意外と古ぼけた・綺麗でない所に、びっくりするような味付けの店があり、気の置けないお客とは、こんな店のほうが、楽しく食事、というより打ち解けて会話がはずみます。  店の主人などは結構ぶっきらぼうで、話かけても碌に返事もしない事も通例ですが、打ち解けると、料理のネタの話や、こだわり、門外不出の出汁の出し方、究極では、主人の生きてきた歴史などが、朴訥な会話の中に、でてきます。  そのときのお客の相槌などから、お客の人間性なども判って、結構為になり面白いです。 %CC%B5%C2%EA.bmp この中に、松山に行くと必ず足を運んだ 「おでんやさん」 があります。  場所は、松山城を下った二番町の右側確か三軒目、赤提灯におでんと書いてありました。  その店に始めて入ったのは、冬の寒い日のこと、角を曲がって、赤ちょうちんを見つけ、何の気なしにおでんもいいなと、暖簾をくぐりました。  土間はコンクリートの打ちっぱなし、壁はモルタル、中のカウンターや周りの調度品は、結構古びた赤黒い木造り、天井には裸の蛍光灯(直管)がぶら下がっています。  一瞬どうしようかと戸惑いましたが、何か摘まんですぐ出ようとお互い目配せし、カウンターに座りました。 黒光りのするカウンターの前には、大きなおでんの鍋が備え付けになっています。  蛸足・巾着・こんにゃく・大根・など、一般的なネタが、大きな四角い鍋につかっており、お酒のあとなので、大根を頼みました。 親父はうんもすんも無く、大根を二個皿の上の載せ (当然煮汁をかけて) カウンターに置きました。  これが柔らか過ぎもしないで、煮汁が沁みこんで、丁度良い味付けで、寒い中を歩いてきた体の中を通っていきます。 「うーん旨いな」 とでも言ったと思います。 主人は料理の下準備で、下を向いて何かやっていましたが、一瞬顔が緩んだような気がしました。 多分、「これは愛媛で取れた大根ですか?」 とでも聞いたと思います。  主人は 「お客さん、運がいいよ。 うちは大根はこの時期しか出さんのよ」 と、返事が返ってきました。 大根談義をしている内に、何時の間にか、親父さんの歩いてきた道の話まで、発展していました。  満州の引揚者で、満州のシバれる寒さだとか、帰ってきての苦労話など聞かされて、結局3時間ほどの長逗留になってしましました。 その後は度々暖簾をくぐりました。 困った事は、季節により、好みのネタが無くなる事です。  おでんを食べる度に、この店は今どうしているのかと思い出します。  私の店定めの流儀として、店屋の人に言葉を投げ、その返事によって、ちゃんとしている店か、適当かを判断する材料の一つにしています。  たまにファミリーレストランなどでもやってしまい、家族からヒンシュクを買っています。  でも言葉を投げて、どのような言葉が戻ってくるかも、食事に行った時の、楽しみの一つになっています。  店屋の人には迷惑な客だろうな〜。
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